○障害者差別解消法に基づく中山町職員の対応要領
平成31年3月15日
/訓令第3号/議会訓令第1号/農委訓令第1号/教委訓令第1号/
(目的)
第1条 この訓令は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定)に即して、法第7条に規定する事項に関し、中山町職員(非常勤職員を含む。以下「職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。
(不当な差別の禁止)
第2条 職員は、障がいを理由として障がい者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障がい者の権利利益を侵害してはならない。これに当たり、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。
(合理的配慮の提供)
第3条 職員は、事務又は事業を行うに当たり、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障がい者の性別、年齢及び障がいの状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮をしなければならない。これに当たり、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。
(1) 日常の執務を通じた指導等により、障がいを理由とする差別の解消に関し、その監督する職員の注意を喚起し、障がいを理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。
(2) 障がい者等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申し出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。
(3) 合理的配慮の必要性が確認された場合、監督する職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。
2 監督者は、障がいを理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。
(相談体制の整備)
第5条 町は、職員による障がいを理由とする差別を受けた障がい者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため相談窓口を設置するものとする。
(研修及び啓発)
第6条 町は、障がいを理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し必要な研修・啓発を行うものとする。
附則
この訓令は、平成31年4月1日から施行する。
別紙
中山町職員の障がいを理由とする差別の解消の推進に関する対応要領に係る留意事項
第1 障がい者
法は、障がい者を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」と定義している。これは、障がい者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、心身の機能障がいのみに起因するものではなく、社会における様々な障壁(事物、制度、慣行、観念その他一切のもの)と相対することによって生ずるものとのいわゆる「障害の社会モデル」の考え方を踏まえている。したがって、法が対象とする障がい者は、障がいのある人すべてであり身体障害者手帳や療育手帳等の保持者に限られない。
また、特に女性である障がい者は、障がいに加えて女性であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障がい児には、成人の障がい者とは異なる支援の必要があることに留意する必要がある。
第2 不等な差別的取扱いの基本的な考え方
法は、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならないとしている。これは、障がい者に対して、正当な理由なく、障がいを理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障がい者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障がい者の権利利益を侵害することを禁止している。
ただし、障がい者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。したがって、障がい者を障がい者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障がい者に対する合理的配慮の提供による障がい者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障がい者に障がいの状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。
このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障がい者を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障がい者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。
第3 正当な理由の判断の視点
第2にある正当な理由に相当するのは、障がい者に対して、障がいを理由として、財・サービス又は各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないといえる場合である。職員は、正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障がい者及び第三者の権利利益(安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)、事務又は事業の目的、内容及び機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。また、職員は、正当な理由があると判断した場合には、障がい者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めるものとする。
第4 不当な差別的取扱いの具体例
不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は以下のとおりである。なお、第3で示したとおり、不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなる。また、以下に記載されている具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること、さらに、それらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。
(不当な差別的取扱いに当たり得る具体例)
○障がいを理由に窓口対応を拒否する。
○障がいを理由に対応の順序を後回しにする。
○障がいを理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。
○障がいを理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。
○事務・事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障がいを理由に、来庁の際に付き添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付き添い者の同行を拒んだりする。
○障がいを理由に、施設等への入場等を拒否すること。
○本人又はその家族等の意思(障がいのある方の意思を確認することが困難な場合に限る。)に反したサービス(施設への入所など)を行うこと。
第5 合理的配慮の基本的な考え方
1 法は、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。
合理的配慮は、いわゆる「障害の社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、障がい者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。合理的配慮を行うに当たっては、次のことに留意が必要である。
○事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られる。
○障がい者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものである。
○事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばない。
2 合理的配慮は、障がいの特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障がい者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「第6過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障がい者の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。
なお、合理的配慮を必要とする障がい者が多数見込まれる場合、障がい者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。
3 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障がい者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。
また、障がい者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障がい者の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。
なお、意思の表明が困難な障がい者が、家族、支援者・介助者、法定代理人等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障がい者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障がい者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることとする。
4 合理的配慮は、障がい者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障がい者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障がいの状態等が変化することもあるため、特に、障がい者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。
5 事務又は事業の全部又は一部を委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障がい者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めることとする。
第6 過重な負担の基本的な考え方
過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに次の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障がい者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることとする。
○事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容又は機能を損なうか否か)
○物理的・技術的制約、人的な又は体制上の制約等を考慮した実現可能性の程度
○費用・負担の程度
第7 合理的配慮の具体例
第5で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、合理的配慮に当たり得る配慮の具体例は、次のとおりである。なお、この具体例については、第6で示した考え方による過重な負担が存在しないことを前提としていること、また、これらはあくまでも例示であり、具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。
(合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の具体例)
○段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をする、携帯スロープを渡すなどする。
○配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置を分かりやすく伝える。
○目的の場所までの案内の際に、障がい者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障がい者の希望を聞いたりする。
○障がいの特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。
○疲労を感じやすい障がい者から別室での休憩の申し出があった際、別室の確保が困難であったことから、当該障がい者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。
○不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障がい者に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。
○災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害者に対し、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導を図る。
(合理的配慮に当たり得る意思疎通の配慮の具体例)
○筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字などのコミュニケーション手段を用いる。
○会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番号等が異なりうることに留意して使用する。
○視覚障害のある委員に会議資料等を事前送付する際、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。
○意思疎通が不得意な障がい者に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。
○駐車場などで通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。
○書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、わかりやすい記述で伝達したりする。本人の依頼がある場合には、代読といった配慮を行う。
○比喩表現等が苦手な障がい者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明する。
○障がい者から申し出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて適時に渡す。
○会議の進行に当たり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚又は聴覚に障がいのある委員や知的障害を持つ委員に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心がけるなどの配慮を行う。
○会議の進行に当たっては、職員等が委員の障がいの特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲での配慮を行う。
(ルール・慣行の柔軟な変更の具体例)
○順番を待つことが苦手な障がい者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続き順を入れ替える。
○立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障がい者の順番が来るまで別室や席を用意する。
○スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。
○車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。
○町有施設の駐車場等において、障がい者の来場が多数見込まれる場合、通常、障がい者専用とされていない区画を障がい者専用の区画に変更する。
○入館時に玄関を通過することが困難な場合、別ルートからの入館を認める。
○他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合、当該障がい者に説明の上、障がいの特性や施設の状況に応じて別室を準備する。
○非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障がいのある委員の理解を援助する者の同席を認める。